医療機器開発と医薬品開発(CRA)の違い
※当メディアは株式会社アクセライズをスポンサーに、
Zenken株式会社が制作・運営しています。
医療の発展に欠かせない医療機器と医薬品には、それぞれに特化した治験プロセスがあり、その品質や安全性を管理する専門職として「医療機器開発モニター(MD-CRA)」と「臨床開発モニター(CRA)」が存在します。医療機器開発と医薬品開発では治験の目的や製品特性が異なるため、MD-CRAとCRAの業務には多くの違いがみられます。
ここでは医療機器開発と医薬品開発の違いを深く掘り下げ、それぞれのCRAの働き方や治験の進め方、適用される規制について詳しく解説します。
医療機器開発(MD-CRA)と医薬品開発(CRA)現場の働き方

MD-CRAは医療機器の操作性や安全性、有効性を評価する役割を担い、「ISO14155」に準拠してモニタリング業務を行います。医療機器は製品ごとに特性が異なるため、プロトコルのカスタマイズや使用環境の標準化が求められます。また、デバイスの導入適用性や操作方法の評価、市販後調査への関与も特徴です。
一方、CRAは「ICH-GCP」に準拠し、治験データの正確性や一貫性をモニタリングします。業務には治験施設でのプロトコル遵守確認、進捗管理、ランダム化二重盲検試験の実施が含まれます。医薬品の治験では、均一性の高い成分を基に、患者の安全性や有効性を科学的に評価します。
MD-CRAの役割とCRAの業務内容の違い
医療機器開発モニター(MD-CRA)と臨床開発モニター(CRA)は、いずれも治験データの信頼性と安全性を担保しますが、対象製品の特性に基づいて業務内容や求められる知識が大きく異なります。
MD-CRAの特徴: 医療機器の操作性やユーザーインターフェースを評価し、現場適用性を確認します。規格「ISO14155」に準拠し、治験モニタリングやデータ収集、市販後調査に携わる場合もあります。
CRAの特徴: ICH-GCP(医薬品の治験実施基準)に準拠し、治験データの品質と一貫性をモニタリングします。主な業務には、治験施設のプロトコル遵守確認、データ正確性の確認、治験進捗管理が含まれます。
医療機器と医薬品の治験プロセスの違い
医療機器と医薬品では、治験プロセスそのものに大きな違いがあります。適用される規制やプロトコルの設計、データの取り扱い方法に違いがあるのがその理由です。
医療機器の治験プロセス
ISO14155に準拠する医療機器の治験では、デバイスごとにプロトコルがカスタマイズされ、操作性やユーザーインターフェース、現場での導入適用性が重要な評価ポイントとなります。医療機器は、使用環境や操作方法が治験結果に大きく影響するため、MD-CRAは使用者へのインストラクションや使用環境の標準化を行い、データのばらつきを抑える役割を担います。
医療機器の多くは「届出」や「認証」で市場投入されますが、クラスIIIやクラスIVの高リスク機器はPMDAの承認審査を受け、治験が必要です。MD-CRAは、この限られた治験の中でデータ収集、市販後調査、臨床研究を通じた製品改良にも関与します。
- 規制: 「ISO14155」に準拠し、デバイスごとにプロトコルをカスタマイズ。
- 特徴: 操作性や使用環境が治験結果に影響を与えるため、柔軟な対応が必要。
- 対象範囲: クラスIIIおよびクラスIVの高リスク機器が中心。
- MD-CRAの役割: 使用者への指導やデータ収集、市販後調査を通じた製品改良。
医薬品の治験プロセス
医薬品治験は「ICH-GCP」に準拠し、画一化されたプロトコルに基づいて進行します。医薬品は均一性の高い成分で構成され、服薬方法や投与量が標準化されているため、環境の影響を受けにくいのが特徴です。CRAは、データの信頼性と客観性を確保するためにランダム化二重盲検試験などを実施し、安全性と効果を評価します。
また、服薬管理や投与管理における厳格なガイドラインの遵守も求められます。
- 規制: 「ICH-GCP」に準拠し、標準化されたプロトコルで進行。
- 特徴: 均一性の高い成分で構成され、環境の影響を受けにくい。
- CRAの役割: データの信頼性を確保し、安全性と有効性を評価。
MD-CRAとCRAのキャリアの違い
MD-CRAのキャリア
MD-CRAは、医療機器の特性に関する深い知識を活かし、以下のようなキャリアパスを選択できます:
- 製品改良の専門家: 市販後調査(PMS)や臨床研究のデータを分析し、製品の安全性や使用感を改善。
- 新製品開発のリーダー: 使用者のフィードバックを設計チームに反映し、次世代の医療機器開発を推進。
- 規制関連業務: ISO規格や国内外の規制に基づく承認プロセスをリードし、PMDAやFDAとの折衝を担当。
- 教育・研修担当: 医療スタッフへの製品操作トレーニングや、治験モニタリングの新人育成を行う役割。
また、医療機器メーカーやCROでのキャリアを積むことで、プロジェクトマネージャーや臨床研究部門の責任者といった上位職に昇進することも可能です。
CRAのキャリア
CRAは、医薬品の治験に関する専門スキルを活かして、以下のような多様なキャリアパスを進むことができます:
- シニアCRA: 複数の治験施設を担当し、臨床試験全体の進捗を管理。若手CRAの指導も行う。
- プロジェクトマネージャー(PM): 臨床試験全体を統括し、スケジュールやリソース管理、予算配分を行う役割。
- 規制当局(PMDA、FDAなど): 治験監査官や承認審査官として、治験の適正性や品質を確認。
- データマネジメント専門家: 治験データの管理・解析に特化し、統計解析チームと連携して治験結果の精度を向上。
- 教育・研修担当: 新人CRAの育成や治験施設の医療スタッフへの研修を担当。
CRAは経験を積むことで、製薬企業の臨床開発部門やCROでの責任者、グローバル治験の統括者など、さらに幅広いキャリアを目指すことが可能です。


医療機器開発と医薬品開発におけるMD-CRAとCRAの役割を理解することで、それぞれの専門性やキャリアの重要性が明確になります。いずれの存在も臨床試験の質を確保し、ひいては医療技術の発展、医療の質の向上に寄与するものです。
MD-CRAとCRAは異なるアプローチをとっていますが、治験データの信頼性に責任を持つという意味では、等しく人々の健康と安全を守っているといえるでしょう。